キルヒナーの肖像木版画

手許にE・W・コンフェールド著「エルンスト・ルードヴィッヒ・キルヒナー」という分厚い画集があります。DAVOSというところから出版されています。滞欧中にキルヒナーの風景を刻んだ木版画を見て感銘を受けたので、その当時この画集を購入したものと記憶しています。自分の生活費の中からどうしてこんな画集が買えたのか不思議ですが、なけなしのお金をはたいたものだろうと思いかえしています。いづれこの画集のドイツ語を読破しようとしたことは記憶にありますが、今はそんな時間的な余裕も気力もありません。ただこの画集に掲載されている様々な人物の肖像を刻んだ木版画は秀逸です。風景画より心に迫る何かがあります。デフォルメが心理を描写しているようで、まさにドイツ表現主義の面目躍如たるものがあると感じます。その頃は自分も日本で制作してきた木版画をもう一度彼の地でやってみたいと思っていました。なかなかうまくいかず、結局はアカデミーの彫刻クラスに籍をおきましたが、キルヒナーの影響がずっと続いていました。

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