「コンポジションⅦ」の印象

画家カンデインスキーのまとまった展覧会は2002年の春頃に東京国立近代美術館で開催されています。印象派の展覧会と違って、人ごみの中を観てまわることはなかったと記憶しています。自分が印象に残った作品は油彩による大作の「コンポジションⅦ」。対象は解体され、ほとんど何が描いてあるのか不明でしたが、色彩のハーモニーが美しく、色彩と渦巻くフォルムが圧倒的な迫力をもっていたことが印象的でした。当時購入した図録にはカンデインスキーの言葉が掲載されています。「コンポジションという言葉を耳にすると、私は心中大いに衝撃を受けて、後には[コンポジション]を描くことを自分の生涯の目的としたのである。」この言葉からわかるようにこの「コンポジションⅦ」は何が描いてあるのかという対象は問題ではなく、構成そのものを表現しているので、感覚をダイレクトに受け入れるべきと考えます。抽象絵画の鑑賞はまずそんなところから始めるのがいいと思います。

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