ウィーンの記憶再び

台風が過ぎても、相変わらず湿気のある日が続いています。早く空気が乾燥して澄みわたる日が来ないかなと心待ちにしています。昨年のブログをもう一度読み返すと、やはり20数年前に住んだウィーンに思いを馳せている自分がいます。ウィーンは9月には紅葉が始まり、黄色く色づいた並木が街に郷愁と憂いをもたらし、その雰囲気は(独身の頃はかなり応えましたが)芸術を勤しむのに絶好の機会と感じていました。秋になると必ずウィーンの情景が目に浮かぶのです。でもその頃の自分は迷ってばかりで、作品も納得がいかず、ヤル気が空回りしていました。今思えば充電期間。情報を集めつつ感覚を磨く時代。素敵な環境にありながら何も出来ない虚しい時間。そんな記憶まで甦ってきます。これは遠い記憶とは思えません。今ウィーンにいたらどうなのか。乾燥して澄みわたる空気の中で、何をやっているのだろうか。そんな思いに駆られながら、湿気の多い作業場でひたすら制作する自分がいます。 Yutaka Aihara.com

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