「青騎士」を読んで

年刊誌「青騎士」は1912年ミュンヘンで出版された、という訳者の前書きから始まって、この貴重な本に様々な芸術家が評論を寄せています。1912年といえば20世紀初頭。ほとんど1世紀前に書かれたものです。第一次世界大戦で中断し、その後ついに出版されませんでした。「青騎士」出版編集を担当したカンデインスキーのパートナーはフランツ・マルクでした。画家としての才能ばかりではなく文才があったのは、カンデインスキーと同じ資質をもった人だったようです。マルクは第一次世界大戦で36歳で戦死。またマルクの親友で優れた水彩画を残し、また詩人としての才能に恵まれたアウグスト・マッケも27歳で戦死。こんな状況の中で「青騎士」が出版され「青騎士展」があったことを思うと、この時代に彼らがやり遂げようとしたことが生々しく伝わってきます。「青騎士」の新しい思想は、今でこそあたりまえとなったことも多く、また当時を考えると彼らの初心の意気込みや新鮮さもあって、読みごたえのある内容になっていました。

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