棟方志功の装飾世界

学生時代に版画制作に没頭した時期がありました。初めはドイツ表現主義の影響で、ぎくしゃくした構図の木版画をやっていました。人物描写が劇画のようになり、全体はプロレタリア・アートのようで、彫った作品は気に入らないものばかりでした。そんな時によく見ていたのは棟方志功の板画でした。自分は彫り方が中途半端に上達して、その分つまらない作風になってしまいましたが、棟方志功の板画は不器用さを残したまま、その装飾世界は命を謳い上げていました。装飾性が生命感を宿しているのは縄文土器に通じるもので、棟方志功が無我の境地で制作をしていたのがよく伝わります。自分はこの時から具象傾向の木版画はやめてしまいました。それでもよく鎌倉山の棟方志功記念館には出かけました。青森県の記念館にも足を運びました。あの天衣無縫な作品が時々見たくなるのです。今の彫刻で棟方志功の境地になれればと願う毎日です。

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