遺跡めぐり行脚

1985年晩夏、5年間住んだウィーンの住宅を引き払って、ヘレニズム時代の都市遺跡を見にトルコやギリシャに数ヶ月の旅に出ました。交通手段はもっぱらバスと徒歩でした。ヒッチハイクもしました。何といっても遺跡は町から離れた山や土漠にあり、日本のように観光化されてはいませんでした。トルコのペルガモンやサルデス、エフェソスを振り出しにクシャダス、プリエネ、ミレトス、デイデイマ、アンタルヤ周辺の遺跡などを体力の続く限り見て歩きました。もう20年以上前のことなので、地名は虚ろに覚えていますが、印象はゴチャゴチャになって、どこの遺跡がどうだったかはハッキリしません。ただ都市を形作った計画はどこも立派で、当時の景観を思い浮かべるだけでワクワクしていました。この時、しっかり刻み込んだ敷石だけの景観やわずかに残った柱が、自分の作品として生まれるのは10数年先のことです。当時そんなことを考える余裕がなく、全身で遺跡のある場所の空気を吸っていました。

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