R・ハウズナーの顔

ウィーン幻想派の話です。ウィーン美術アカデミーに学んでいた20数年前に、ハウズナーを1度だけお見受けしたことがあります。ハウズナーはウィーン幻想派の画家の中でも最年長でリーダー的役割をしていました。画風が自分の顔を主なテーマにした具象画なので、アケデミーで会った時もすぐ本人だとわかりました。私は画家が描くものは、それが風景だろうが抽象だろうがすべて自画像だという持論があります。さしずめ自分が作っている抽象彫刻は自刻像だと思っています。ハウズナーの表現する世界は狭義な意味での自画像ではなく、顔をテーマにした謎解きといってもいいくらいバリエーションに富んだ意味を持つ自画像です。画面は顔をベースに分割されて、そこに自分が関わりをもった様々な事象が描きこまれています。自己分析的で、本人にしかわからない情景があって、自分が歩んできた過去を謎めいて表しています。シュールレアリズムとは異なった世界を感じさせてくれます。

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