E・フックスの銅版画

ウィーン幻想派の画家の中で、ウィーンの街中のギャラリーに作品があるのがE・フックスの銅版画です。フックスは煌びやかな油彩画を多く描いていますが、モノクロの銅版画にも力量のある画家だと思います。フックスの宗教性や神話性のある世界は、たとえばフックス好みのビーナスや王や兵士が独特な装飾で彩られて、その描写力に舌を捲きます。全体としては寓話的な世界ですが、細部のリアリテイには目を見張るものがあります。銅版画は量産ができるものなので、かなりたくさん出回っていて、ギャラリーだけでなく書店にも飾られていて、手彩色をしたものからカラー刷りをしたものまで様々な試みをして市販されています。フックスはユダヤ系の画家で、同じウィーンで活躍していたフンデルトワッサーもユダヤ系。フンデルトワッサーも様々な作品を作って市販していました。どうもユダヤ系芸術家は芸術の道に長けているばかりではなく商売熱心でもあるようです。

関連する投稿

  • グスタフ・クリムト 世紀末ウィーンの美術界で活躍した画家です。作品はベルベデーレ宮殿内のギャラリーにありました。ウィーンではあまりにも有名な画家で、作品を絵葉書やポスターにして街のあちこちの土産物店で売っていました。刺 […]
  • 旧ユーゴの画家ジェネラリッチ 旧ユーゴのヘルビネ村でジェネラリッチさんという売れっ子画家にお会いして、自宅兼ギャラリーで作品を見せていただきながら、趣味の卓球のポーズをして記念写真を撮りました。もう20数年も前のことなので、ご存 […]
  • ジグゾーパズル的ブリューゲル ウィーン美術史美術館にはブリューゲルだけの部屋があって、代表作がたくさん観られます。そんなことも知らずにウィーンに行き、この農民画家に出会った時は、息を呑むほど驚いて、ただひたすら見入ってしまいまし […]
  • 創作絵本「ウド」の思い出 学生時代、彫刻を学ぶ傍らビジュアルな表現に興味を持ち、手製の絵本を作りました。当時好きだったドイツ表現派のモノクロの木版画を発想の源にして、数ページにわたる創作話を考え、文字のない絵本にしようと企画 […]
  • フンデルトワッサーに会った日 フンデルトワッサーが亡くなってどのくらい経つのでしょうか。自分がウィーン国立美術アカデミーに在籍していた頃、アカデミーにはフンデルトワッサー教室があって、よくそこを見に行きました。観葉植物が所狭しと […]

Comments are closed.