アールデコ様式

自分の作品が具象傾向から抽象化していく過程で、歯車という具体的なイメージを使ったのは、あるいは本当の意味で抽象化と呼べるかどうかわかりません。ウィーンではアールヌーボーやアールデコ様式がよく目につきました。歯車はアールデコ様式を象徴するカタチのひとつであるとも言えます。アールデコは20世紀初頭にあって、工業化が進んだことで製品の量産が可能になり、それにより庶民生活が豊かになっていく時代に生まれた様式で、直線や円形を多用しているところに特徴があります。そうした時代のものをウィーンでは日常の中に発見できました。初期のものはウィーン工芸美術館に展示してありました。アールデコはモダニズムの旗頭となっていましたが、冷たい造形でもあり、長く人々に愛されるものではなかったように思います。世界が大きな戦争に向かう前の、ほんの一瞬訪れた洒落たモダンな時代とともにアールデコは滅んでいったのかもしれません。

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