歯車の構成

凹凸のついた歯車をよく自分のモチーフに使います。螺旋や渦巻きと違い、若い頃から自分の作品に繰り返し出てくる要素です。具象の作品から出発して、人体を離れる契機になったのが歯車の使用でした。歯車は具象としても扱えるし、都市的な構成要素もあります。ウィーン美術アカデミーでレリーフを作る時に歯車の構成を使い始め、都市的な景観をイメージしました。ウィーンの街にはアールデコ時代の建物が多く残っていて、また橋や街灯にも前時代的な美しさをもった構築物が多かったのも、歯車を使い始めた原因かもしれません。赤錆の歯車に支えられた工場とレトロなモダニズムが今の作品を生んだとも言えます。

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