ウィーンの古い街角で

ウィーンに住み始めて、まず驚いたのが店が閉まるのが早いことと、夕暮れから夜にかけて街を散歩する人が多いことでした。目抜き通りであるケルントナー通りにはストリートミュージシャンが現れ、アコーデオンやバイオリンを聴かせてくれました。こんな時間帯まで商売をやっているのは野暮、店の美しくデイスプレイされたウインドウを眺め、流れてくる音楽を楽しもうとしている人たちの心の余裕に、慌しい日本から来た一介の留学生は暇を持て余していました。暇に任せてあちこちを歩き回ったりしました。ギャラリーの絵をじっくり観れたのもこんな時間があったからだと思います。文化が育つのはこういう環境があればこそと思いますが、当時は国民がこんなゆったりと構えていて、この国の経済事情はどうなっているのかなどと思いを巡らせたりしました。でも今でもそんな散歩が印象に残っているなんて素敵なことかもしれません。

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