ルーマニアの墓地

亡父の墓石を立てた時に、若い日々に旅したルーマニアの村々にある墓地に想いを馳せました。ルーマニアの木造りの墓地は死者のエピソードを取り上げて、具象的な絵画作品、いや浮き彫りされた厚板に彩色された作品というべき墓標があり、その楽しさは思わず微笑んでしまいたくなるほどでした。ちょうどその頃旅した旧ユーゴスラビアの村で、農民が農閑期にガラスに描いたフォークアートと出会い、その素朴な雰囲気がルーマニアの墓標に似ていたのを思い出します。専門的な美術を勉強したわけではない人々が作る素朴な造形世界はどうして肩肘張らずに面白いのか、構成や色彩の取り合わせにはハッとするものも多く、琴線に触れることもありました。こんな墓地に葬られることは、あるいはとても贅沢なことなのかもしれません。

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