ルーマニアの門

ウィーンで学生だった頃、紀行作家のみやこうせい氏と学生食堂で知り合い、それが縁で彼が取材していたルーマニアに度々同行しました。自分は彫刻を学んでいたので、ルーマニアといえばブランクーシに関連するものがあるかもしれないと考えていました。結果、彼の地は多大な収穫をもたらせてくれました。ブランクーシがまだパリに出ていなかった頃、大工としてルーマニアで働いていた過去があるのを自分は知っていました。ルーマニアの伝統的な家の作りを見て、家を支える柱がブランクーシの作品「無限柱」と酷似していたり、とりわけルーマニアの家にある門は独特な抽象文様が刻まれていて、ブランクーシの発想がまさにここからきていることを物語っていました。門は魔よけの役目をもった狼の歯型だったり、生命の樹木だったり、生活の中からルーマニア人が創り出した素晴らしい造形でした。それが頭の片隅にあったためか、帰国してからブランクーシに習い自分も自らの原風景を探しに社寺を度々訪れることになったように思います。

関連する投稿

  • プロレタリア・アート
    1980年代にウィーンに住んでいたので、まだソビエト連邦を中心とする共産圏が隣国にありました。ハンガリーや旧チェコスロバキアに出かけていくと、広場にはよく労働者や兵士を賛美する具象彫刻のモニュメントが置かれていました。腕...
  • ブランクーシのアトリエ
    たまに記憶の底から甦るところにパリのブランクーシのアトリエがあります。20数年前の当時はポンピドーセンターの近くにあって写真でしか知らなかったブランクーシの作品が所狭しと置かれていました。思っていたより小さく白っぽい空間...
  • 「神と人を求めた芸術家」
    表題はドイツの近代彫刻家エルンスト・バルラハのことを取り上げた「バルラハ~神と人を求めた芸術家~」(小塩節著 日本キリスト教団出版局)の副題になったコトバです。バルラハは最近日本でも徐々に知られてきた彫刻家であり劇作家で...
  • 人体塑造からの転位 Ⅱ
    先日のブログ「人体塑造からの転位」の続きです。現在自分の彫刻作品は、ロシア人画家カンディンスキーが提唱した非対象という意味で言えば非対象でも抽象でもありません。形態の基本となる要素を抽出している点では、確かに抽象化をして...
  • 記憶の底から…
    昨日はエルンスト・バルラッハのことについてブログに書きました。今読んでいる「バルラッハの旅」(上野弘道著)で、自分の記憶の底に眠っていた滞欧生活のことが甦り、ウイーンの美術館にあったバルラッハの「復讐者」という作品が鮮や...

Comments are closed.